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サンゴ礁保全 保護 リーフチェック/ネットワーク軌跡11
ネットワークへ参加するきっかけを与えてくれた、「水中生物ネットワーク」より送られてきた68kMacで96年より発信したメール を整理した一部です。佐伯信雄
       INDEX
   マングローブの役割と生態
96/01 サンゴ礁環境と生態を学ぶ図書リスト
96/01 小浜ー西表島架橋問題の背景と現状
96/02 コブシメ産卵エコロジー
96/03 Monsoon Smog
96/05 Manta Watching Data
96/06 黒潮物語(1
96/06 黒潮物語(2
96/06 黒潮物語(3
1990’友人の出版企画で彼の観察記を元に作成した企画文です。同年7月から琉球新報に12回連載された時も、ニライ社で出版され た時も、この 文章は改編されておもかげすらなくなりました。「マングローブの生き物たち/西表島」吉見光治(写真、文)最後のあとがきも、1993’改訂版では外され ました。
 
EDITON マングローブの役割と生態
 
CONCEPT
 
 地球環境保全が世界的に問われるなかで、日本の環境対策とその認識は、余りにもお粗末といえる。豊かな緑・水系と海に恵まれすぎた日本は、山・ 川・海の織り成す生態の意味を理解せずに、享受だけしてきたとも言える。沖縄の島嶼性・亜熱帯・サンゴ礁生態系の持つ意味は、それがあまりに美しすぎて、 余りに滅び易いゆえに、今人類に問われている生態への認識を顕示させる。アカデミズムに無縁な、しかし自由で、その対象を愛でる視線が、隠された秘密を覗 く。
 
TITLE1 沖縄の海と山との掛け橋・マング ローブ
  
 深い山々から続くフラットな湿地とマングローブ林の緑。その先に続くサンゴ礁の透明な海が、エメラルドグリーンのグランディーションを見せなが ら、深い青にと落ち込んでいく。琉球列島のなかでも未だ原始の面影が残る西表島は、豊かな自然に魅せられて多くの人々が訪れる。西表島は雨の多いところ。 四季を通じて降り注ぐ雨は、山の草木を洗い、落葉や落枝・腐葉土を運ぶ。湿地を抜け、やがて大小の河川に集まり、マングローブへと流れ込む。濁流になって 暴れる川でさえ、大きく広がるマングローブで、急速にその勢いを失ってしまう。栄養分を多量に含んだ土砂や落葉などの有機物が、ゆっくりと沈殿する。ヒル ギ群落の落葉も加わり、マングローブは貯蔵庫のように、落葉と土砂で満たされる。そして腐りかけた落葉などを餌とするカニや貝たち、腐敗食物連鎖という生 態系が、マングローブを中心に、潮の干満というゆっくりしたリズムのなかで繰り返される。それは山から運ばれる落葉や栄養分を、そこに住む小動物が餌とし て処理し、海へきれいな水として手渡す中継点ともいえるだろう。
 そんなマングローブに生息する様々な生き物たちを観察してみた。
 
TITLE2 天然の有機物処理場・マングロー ブ
 
 潮が引き干潟が姿を表わす頃、カニ達も待ち焦がれていたかのように、穴から這い出してくる。食事の時間なのだ。ハサミを器用に使い砂を口に運 び、砂の中の腐敗しかけた有機物などを濾し取るという作業が始まる。それが砂ダンゴ作りである。シオマネキ・ミナミスナガニは穴の周辺で、ミナミコメツキ ガニは引潮で表われる干潟を追いかけて、群れで行進しながら砂ダンゴを作っていく。やがてすっかり潮の引いた干潟は、見渡すかぎり砂ダンゴで埋め尽くされ る。リュウキュウオサガニだけは、泥質の水たまりでハサミを動かし水流を作り、有機物を口に運んでいる。
 あるとき珍しい光景を目にした。ブラインド内で鳥を観察中、一羽のカルガモが飛来した。カルガモが柔らかい泥の上を歩き、盛んに何かを食べて いる。理解するのに少し時間がかかった。どうやら泥の上の有機物をすくいあげ食べているのだ。人間が見ても泥としか見えないものが、カルガモにとっては餌 となっている。これらはまだ、腐敗食物連鎖の一部でしかなく、連鎖の環は意外な結果へと導いていく。
 
TITLE3 マングローブの浄化生物たち
 
 マングローブのもっとも奥・オヒルギ群落周辺では、干潟の影響も受けにくく、水は茶褐色に淀み、腐敗しているようにさえ見える。そんななかで、 所どころ透明な水たまりを見ることがある。注意深く見ると、何かが潮を吹き上げている。シレナシジミだ。入水官より水と一緒に栄養分を取り込み、出水官よ り取り込んだ残りの水を出している。試しに隔離した水たまりにシレナシジミを入れてみると、翌日には見違えるほど澄みきった水になっているのに驚かされる だろう。栄養分に富んだ汚れ水を、栄養分の少ない透明な水に変える作業で、浄化を手助けしているのがシレナシジミなのだ。
 このオヒルギ群落には、他に数種のベンケイガニの仲間が塚などを造り住んでいて、落下したヒルギの葉とか、ヒルギの根につく藻類を食べている のが観察される。腐敗食物連鎖は水の浄化システムでもあり、沖合いに広がるサンゴ礁には重要な意味を持つ。太陽の光を食べるとまで言われるサンゴ礁にとっ て、水の濁りは死滅を意味する。今日、問題視されている沖縄のサンゴ礁衰退は、赤土流出・家庭排水など水の濁りが原因とさえ言われている。国・県の水産研 究機関による有用水産物の種苗飼育と海洋放流は、シレナシジミなどの浄化生物を対象とすることが、真の水産振興と言えぬだろうか。
 
TITLE4 豊かで複雑な生物層
  
 マングローブの豊富な餌が多くの生物を育む中で、そこに餌を求めて訪れる生き物たちも多種多彩である。潮の引いたマングローブには、陸上の動物 たちが盛んに訪れる。小魚を餌とするカワセミ・クロサギ・ダイサギ・コサギなど。カニが好物のハマシギなどシギ・チドリの仲間。また小さなカニを捕えよう とアシハラガニも隙を伺っている。カンムリワシはアシハラガニ・ベンケイガニなどの大型のカニを狩りに来る。リュウキュウイノシシも好物のカニを求め、そ してイリオモテヤマネコも鳥・魚を狩りにマングローブを徘徊する。弱肉強食の環は、潮が満ちても尽きることはない。捕食魚カスミアジが小魚を追いかけ、カ マス・ダツの仲間が物陰で小魚を狙っている。リボンスズメダイが、貝の卵だろうか盛んにつついて食べているし、夜にはノコギリガサミが獲物を求めて徘徊す る。他にもミサゴが魚を狙って上空を旋回している。
 このようにマングローブという小さなエリア内でも、水中生物と陸上生物が互いに干渉しながら、昼となく夜となく様々なドラマを展開している。 腐敗食物連鎖もマングローブ生態系の一部でしかなく、複雑に組み合わされた自然の営みは、人間の食料となる漁業資源にさえも関わってくる。
 
TITLE5 稚魚たちのゆりかご・マングロー ブ
 
 ヒルギ類の生い茂るマングローブは、様々な環境を創造する。タコ足のようなヤエヤマヒルギの根・オヒルギの複雑なでこぼこの根・メヒルギの低木 林など。潮が満ち水面下に沈んだ複雑な空間は、小魚たちが姿を隠すのに絶好の場所となる。とりわけ栄養分に富んだ水には、動物プランクトン・植物プランク トンも多く含まれ餌に不自由しない。こんな好条件の所は滅多にないと、海から稚魚たちが押し寄せてくる。海水と淡水が混じり合い、塩分が多少薄くなってい るはずだが、稚魚たちは平然と潮に乗って、奥へ奥へと侵入していく。しかし引潮になれば陸地になってしまうところが多く、その前に退散しなければならない のだが、水路とか水溜まりに留まり、潮の上げてくるのを待つ場合が多い。捕食大型魚の侵入が不可能なので、安全だからである。
 これら島と海の接点・マングローブやイノーが、稚魚たちのゆりかごであることを理解することが、漁業にとって大きな意味を持つ。今沖縄では残念ながら、 公共事業によってそのゆりかごが崩壊しつつある。
 
TITLE6 海からの侵入者
 
 マングローブが満ち潮になると、新たな動きが始まる。魚たちが餌を求めて、海から押し寄せてくる。まずフグの仲間ツムギハゼ・コトヒキが先を 競って姿を表わし、干潮時に傷ついたり逃げ遅れたカニなどを求め、先を競って侵入してくる。フグは身体を半分ほど水面に出しながら、ツムギハゼも負けず に、そしてコトヒキは猛スピードで駆けずり回り餌を探す。その後はもう大混乱。イワシ・ボラの仲間・オキフエダイ・アイゴの仲間・クロダイ・カスミアジな ど、それぞれが餌を求め、マングローブの奥へ奥へと侵入していく。捕食魚に追われ水面に飛び上がり、逃げ惑うイワシの群れ・オニボラを追いかけるカスミア ジ、バシャバシャ音をたてながら猛スピードで追い回す。時にはサメの仲間も背びれを出して、上流へと上がっていく。そんな喧騒と混乱も干潮時には収まり、 マングローブは何事もなかったかのような静けさに包まれていく。満潮時のみとはいえ、海の食物連鎖がマングローブやイノーにまで関わる生態系の、目に見え ぬ環が見えかける。
 
TITLE7 鳥とマングローブ
 
 マングローブを住処とする鳥たちは数多くいるが、もっとも適応しているのがカワセミのようだ。カワセミは清流にすむ鳥だが、沖縄ではマングロー ブである。餌の小魚が豊富だからであろう。餌場に姿を表わし物の10分もしないで、十分な小魚を獲り飛び去さっていく。数多く生息しながら姿を見る機会が 少ないのは、こんなところに理由があったのだ。アカショウビンもマングローブで良く姿を見かける。ミナミトビハゼが好物で、オヒルギ群落によく見られる。 サギの仲間も干潮時にマングローブを利用する。水溜まりなどに取り残された魚を追いかけ、ばたばた走り回っている。ほかにオヒルギの蜜を吸いにヒヨドリ・ メジロが押しかけ、シジュウカラ・サンショウクイも昆虫を食べに訪れる。ムラサキサギが営巣木にヒルギ類を利用し、付近の湿地に餌を取りに飛び交っている のが、最近確認された。鳥たちにとってマングローブは、他に比較できぬ豊かな餌場であり、森と川と海を併せもったものなのかもしれない。
 
TITLE8 旅鳥とマングローブ
 
 3月から5月にかけてシギ・チドリの姿を見かけるようになる。東南アジアなどで越冬していたシギ・チドリ達が、繁殖のため故郷を目指して北上途 中なのだ。遠くはシベリヤ・アラスカ方面まで渡って子育てする鳥さえいる。そして繁殖の終わった秋には、また家族を連れて東南アジア方面へ南下し越冬す る。そんなシギ・チドリ達にとってマングローブや干潟は、餌の補給と羽を休める重要な中継点となっている。満潮時などマングローブ域を歩いていると、ヤエ ヤマヒルギなどの根に隠れて休息している姿を良く見かける。危険な動物が比較的少ないうえ、潮が引けば餌のカニやイソメ類も多く、快適な環境なのであろ う。またバードウォッチゃーの恋人とも称されるヤマショウビンも、毎年琉球列島を通過していくのが確認されている。やはりマングローブや湿地で餌を獲り休 息しながら、対馬・朝鮮半島・中国などへ渡っていく。旅鳥にとっては、国際空港なみの役割がマングローブにあった。
 
TITLE9 マングローブの不思議な生き物た ち
 
 マングローブを歩いていると、なぜだろう?なにをしているのだろう?と考えさせる動物たちに出会うことがある。木陰でじっと動かないミナミトビ ハゼに出会った時もそうだった。近ずくと逃げるはずのミナミトビハゼが、逃げようとしないではないか。さらに近ずいて写真を数枚撮っても全く逃げる気配が ない。おかしい、少し様子が違う、もしかして寝ているのかもしれない。いろいろ考え巡らしてみると、潮の引いたマングローブは水も殆どなく、炎天下の砂泥 域は40℃近くに水温も上昇している。これはあまり熱いので熱さを避け、水面から離れたところで寝ているに違いない。後日フィルムの現像が仕上ってきて びっくりした、この魚にはまぶたがある、魚が小さすぎて撮影中は気ずかなかったが、そこには目を閉じたミナミトビハゼの寝姿があった。なぜ、ミナミトビハ ゼにまぶたが出来たかは解らない。それはまだ、生命の神秘の領域なのかもしれない。
 
TITLE10 マングローブで見られる不思議 な行動
 
 潮の引いたマングローブの干潟に静かに座っていると、あちこちからカニ達が這出してくる。餌を食べながら砂だんごを作っているのだが、良く見る とあちこちでケンカしている。しかし勝負は呆気なくついてしまう場合が多い。中でも良くケンカするハクセンシオマネキ・ヒメシオマネキのオス同士のケンカ は、互いに大きいほうのハサミをぶつけ合い力量をさぐりあう。明らかに大きさの違う場合、ものの一秒もしないで勝負がつく。大きさの変わらない場合、ケン カは稀に長引く。互いにハサミをかみ合わせ遠くへ投げ飛ばそうとする。不利な方は足を砂に埋め抵抗するが、ときには50〜60cm宙を飛ぶこともある。そ れぞれの巣穴を中心とした縄張り争いなのだ。お気に入りのメスに近ずく勢力争いでもある。しかしあまりに密集して生息しているためケンカが絶えない。それ にケンカばかりしていると餌を食べる暇もなくなってしまう。高密度な環境に生きるカニ達にとって、たがいのハサミをぶつけ合い瞬時に相手の力を見抜く一見 儀式化したケンカこそ、無駄のない生活方法なのだろう。
 
ENDING
 
 一見無用に思えるマングローブの生態系を観察してみると、沖縄のみにかかわらず地球環境にも果たす役割が明かされていく。それは沖縄の山と海を 繋ぐ欠かすことの出来ない要であり、自然の水浄化システムであり、漁業資源の源であり、旅鳥の中継地でもあった。人は何時から自然に学ぶことを忘れてし まったのだろう。自然を失ってから自然を求めても、心の自然は戻ってこない。生態系という見えない環を感じ取る人々がまだまだ残る沖縄から、感じ取ること から理解し学ぶときが目の前に来ている。経済の成長と発展のみに偏った行政体質が、これら有用な自然環境を次から次へと消失させる、日本という国家に捧げ るこれは小さな疑問符である。
 
あとがき 自然へのまなざし
 
 15年来の友人・吉見光治との対話は楽しく、いつも沖縄の自然と生態に関わる内容になってしまう。私が仕事の上で模索しているサンゴ礁の海と島 の関係を話すと、彼はマングローブの生態を、そこに住む生き物達の生活をとうして解き明かしてくれる。彼のマングローブにおける撮影と観察は、私の疑問で あったサンゴ礁の海と島の関係に大きなヒントを与えてくれた。
 八重山地方は、時間当たり雨量の非常に多い地域なのに、その雨水のもたらす汚濁をサンゴ礁の海に流さない。島には大変許容量の大きな水浄化の 働きが備わっているのである。それがマングローブやサンゴ石灰岩地質・有孔虫の死骸で出来た白砂のビーチおよび砂丘などである。それらの自然環境が北半球 最多の種類を誇るサンゴ礁の海を育み創りあげてきた。
 これらサンゴ礁の海と島の仕組・生態が、公共事業という名の開発によって崩壊しつつあり、今後も継続されようとしている。沖縄の生態系の崩壊は、最も美 しいところから、海の中から始まった。私が潜り初めてから18年、なんと多くのサンゴ礁が滅び去っていったことだろう。
 崩壊は徐々に陸域まで広がり、目にまぶしい白砂のビーチが赤茶色に染まり、川や地下水を汚し、豊かな保水力を持つ山にまで迫りつつある。もはやそれは取 り返しのつかない崩壊であり、消失なのだろうか。
 焦りにも似た私のエコロジーへのアプローチとは違い、吉見光治の視線は、自然への慈しみと優しさにあふれ、生命の不思議をかいま見た者にのみ与 えられる自然への認識そのものとも言えるであろう。これは、誰でも始めることはできるけど、誰もがたどり着けるものとは限らない、人間が自然を観察したの ではなく、自然と向き合って生きた吉見光治を、自然が認めてくれた証としてこの本は生まれた、と言っても過言ではない。
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96/01

1991年7月『沖縄サンゴ礁環境ネットワーク』発足時に出したものです。
毎年夏、白保WWFJサンゴ調査に訪れる、三重大教授・目崎茂和氏、国士舘大学文学部助教授・長谷川均氏、駒沢大学大学講師市川清士氏に顧問になってもら いました。
入手不可能なものが多く、また新しく良い本が出ていますので内容を一新する必要があります。

サンゴ礁環境と生態を 学ぶ図書リスト  (製作)沖縄サンゴ礁環境ネットワーク
書名:琉球弧をさぐる
出版:沖縄あき書房  TEL 098-897-0928 1985’出版
価格:1500円
著者:目崎 茂和
解説:地理学の視点からせまるサンゴ礁地形解析と生態解析は、他に比較するもののない独創性と説得力をもつ。サンゴ礁生態が生物学からだけではな く、サンゴの礁を造り残す生態特性ゆえ、地理・地質・気象・生物・地球科学の多面的・統合的学問と研究あることを本著は示した。それだけでなく、地形解析 からの生態解析は明快で解りやすく、もっともっと多くの人に読んでもらいたい名著も現在(95’12月)絶版。再版の予定なく再出版を計画・実現したい。
 
書名:熱い自然 サンゴ礁の環境誌
出版:古今書院    TEL 03-3291-2757 1990’出版
価格:4500円
著者:サンゴ礁地域研究グループ
解説:サンゴ礁研究の複合性を、今日的課題である環境保護の視点で編さんし、サンゴ礁生態解析への新しい一歩を踏み出した好著。実は、サンゴ礁 ネットのスタートはこの本が与えてくれた。本紙巻末座談会に、レジャーダイバーとダイビング業者には自然のメッセージが聞けないとあり、そのことがいつま でも頭にこびりついてしまった。
 
書名:沖縄のサンゴ礁
出版:財)沖縄県環境科学検査センター TEL 098-875-1941 1986’出版
価格:2000円
著者:西平 守孝 編著
解説:沖縄でテレビ放送された琉球大学公開講座のテキスト。サンゴ礁研究の多面性・複合性を、琉球大学16名の教官により、地域の大学が地域の生態を追求 する先駆的書。
 
書名:沖縄の自然ー地形と地質
出版:ひるぎ社     1990’出版
価格:1900円
著者:氏家 宏 編著
解説:1990’琉球大学公開講座のテキスト。

書名:サンゴ礁の生物たちー共生と適応の生物学
出版:中公新書ー中央公論社   1985’出版
価格:640円
著者:本川 達雄
解説:とかくサンゴ礁の生物書は、陸上生態との違いにのみ終始しやすいが、この書は、サンゴ礁生態の不思議を次から次へとそれもわかりやすく説き明かす。 その視点は他に例を見ない独創性に満ちて、この本をサンゴ礁生態観察の優れた教本書にしている。
 
書名:サンゴ礁の渚を遊ぶー石垣島川平湾
出版:ひるぎ社      1988’出版
価格:900円
著者:西平 守孝
解説:石垣島出身の著者が、サンゴ礁生態の入り口に当たる潮干帯の自然観察の楽しさを紹介しながら、豊かで多様な生物が教える生態的意味を説き明かす。陸 域開発の影響を最も大きく受ける渚が、その豊かさと多様さで環境破壊を監視するとい役割を得た。
*文庫本で沖縄の空港で入手可能。
 
書名:マングローブの生き物たち・西表島
出版:ニライ社     TEL 098-867-9111 1992’出版
価格:1800円
著者:吉見 光治
解説:サンゴ礁生態に関わる謎の一つであったマングローブ生態を説き明かした書。サンゴ礁とマングローブの関わりが写真によって様々に示される。 実はこの本、著者吉見光治との話し合いの中から私が企画、構成をし琉球新報に連載させ初版ではあとがきも書いたが、改訂版でなくなった(ー_ー; 。琉球新報でもこの本でも私の追加構成した適切・過激?な文章は、ことごとく削除された苦い思い出がある。
*沖縄の空港で入手可能。
 
書名:石垣島白保サンゴの海ー残された奇蹟のサンゴ礁
出版:高文研      TEL 03-3295-3415  1988’出版
価格:2400円
著者:目崎 茂和
写真:小橋川 共男
解説:石垣島空港問題は、日本の自然保護運動史における新たな1ページだった。国(運輸省、環境庁)、沖縄県、石垣市すべての公共機関を敵に回し た小さな白保集落の戦いに、日本中から共感と支援の声が高まりその声がマスコミや民間組織を動かした。南の島のサンゴ礁を日本中から残せと声を上げて公共 機関を相手に勝ってしまった。これらの結果に大きな役割を果たしたのがこの本ではないだろうか。石垣島空港問題は日本のサンゴ礁研究にも大きな前進となっ たが、一般市民に白保のサンゴ礁生態と保護を説明する、に目崎茂和氏は最適の人だった。前述した同氏著作『琉球弧をさぐる』で解明されたサンゴ礁地形生態 学だけが唯一、白保の青サンゴ群落生成の秘密を説明出来得たからだ。
 
書名:サンゴの海に生きるー石垣島・白保の暮らしと自然
出版:社)農山漁村文化協会 TEL 03-3585-1141  1990’出版
価格:1500円
著者:野池 元基
解説:石垣島空港問題から注目された白保の人々と自然環境、その文化と暮らしは自然環境への理解と共存の歴史でもあった。復帰後の開発・公共事業 の背景にあるシステムの硬直化と、農業基盤整備事業という名の環境破壊を生んだ政治の貧困が浮き彫りにされ、いかに現在の政治機構が国土を破壊しているか 白保の暮らしが痛烈に批判する。
 
書名:見えない戦争
出版:情報センター出版局 TEL 03-3358-0231  1993’出版
価格:1600円
著者:新藤 健一
解説:石垣島空港問題が現在に至る原因は、米日政府の軍事密約にあったことを説き明かす。沖縄の大型公共工事の背景にある軍事目的が石垣島空港問 題の原因だった。石垣島での大型公共工事が空港を残してほぼ終えたと思ったら、なぜか隣の宮古島に大型公共工事が次々と計画され進行している。すでに宮古 島の中央には大型バラボラアンテナを備えた自衛隊基地があり、対岸の下地島には3000M滑走路をもつパイロット訓練飛行場があって、宮古島と下地島を結 ぶ大型架橋計画が進行中なのは何を意味するのか。
 
書名:ニライカナイの島じまー沖縄の自然はいま
出版:築地書館      TEL 03-3542-3731  1988’出版
価格:1800円
著者:池原 貞雄+加藤 祐三編著
解説:沖縄県内で顕在化した環境問題を、そこにかかわる研究者によって解決への提言と併せて紹介する。各研究者は自然生態系と社会的有効性を併せた解説で だれもが理解でき、これら優れた人々の輩出する背景に沖縄の環境問題の深刻さが伺える。
 
書名:海は泣いている・赤土汚染とサンゴの海
出版:高文研        TEL 03-3295-3415  1991’出版
価格:2884円
著者:吉嶺 全二
解説:沖縄サンゴ礁海の定点撮影により、復帰後の海の自然破壊を著者は最も早く訴え証明した。それだけでなく自然破壊の原因が農業基盤整備事業と いう公共工事であり、それがいかに地域の生態系を無視したデタラメな内容かを立証している。日本政府が海外にたいし地球環境への国際貢献を口にしながら、 国内の自然破壊を日々促進する矛盾と沖縄サンゴ礁海の現状を告発する証拠物件書。

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96/01/25

小浜ー西表島架橋問題の背景と現状

小浜ー西表島架橋建設計画は、県営一般農道整備事業として93年4月より竹 富町 は同意取り付けを進めてきた。国の事業採択には90%以上の同意取り付けが必要。
しかし、
・94年4月、西表島住民による<西表島ー小浜島架橋を考える会>結成、町/県に公開質問状提出。
      町/県は西表島で同会に対し説明会開催も95年国庫要請断念し、1年先送りした。(95'1/1 八重山毎日)
・95年3月、小浜ー西表島架橋建設計画96年度国庫要請にむけて住民説明会開催。(95'3/6 八重山毎日)
・95年6月、竹富町水資源開発促進協議会<会長、池原貞雄琉球大学名誉教授>が竹富町水資源開発構想報告。
      (95'6/7 八重山毎日)

 内容は西表島ダム建設計画が主だが?(未公開で推測)、架橋建設計画にも関わっている。それは現在小浜ー西表島間の海底送水が 飲料水 目的で量が限 られ、かんばつ時は、小浜島のリゾートホテルや農業用の需要まで対応できず、架橋ができれば水の豊富な西表島から架橋を通って多量の送水が可能になるとい う、農道架橋の名を借りた水道架橋の思惑が伺える。

・95年8月、<西表島ー小浜島架橋建設促進連絡協議会>懇談会開催。受益農家610人中80人参加。(95'9/4 八重山毎日)

・95年10月、<西表島ー小浜島架橋建設促進連絡協議会>臨時総会にて報告。小浜ー西表島架橋同意率94,5%達成。97年事 業採択 にむけて96年度国庫要請提出か。(95'10/21 八重山毎日)

 以上が架橋問題の経過です。中央のメディアが伝えきれていない点として、架橋問題が水資源開発構想と連動している可能性が高い こと。 言い替えれば、西表島ダム建設計画と西表島ー小浜島架橋計画は一体である事。

この日本中を石垣空港問題の再燃にしかねない計画が二つもあり、問題の水資源開発構想の竹富町水資源開発促進協議会会長が自然保 護でも 名高い人である矛盾。(WWWFJ南西諸島委員会委員長)

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96/02/07
       ☆☆☆ コブシメ産卵エコロジー ☆☆☆

◆コブシメとは?◆

 軟体動物門、頭足網、イカ類中のコウイカ類に属し、最大種で50cm以上10kgを超すものもいる。大きな胴部内に石灰質で船 型の甲 を持 つ。頭部に収められた蝕腕を、素早く伸ばして魚を捕獲する。カラストンビと言われる固くて強い口で、捕食した魚の頭も噛み砕く。そのカラストンビに刻まれ たスジが年齢を示す年輪といわれてる。

◆生息海域、産卵時期◆

 サンゴ礁域によく見られ、国内では南西諸島以南に生息するコブシメの産卵時期は、冬から春にかけて1月〜4月頃です。

◆産卵海域、産卵床◆

 産卵場所は、外洋からの潮流に面したリーフの浅いチャンネル〜水深10mまでが多い。産卵床となるサンゴは、外敵に捕食されに くい細 かな枝のユビエダハマサンゴ、ヒメアナサンゴモドキ、サオトメシコロサンゴなどが 選ばれる。

◆産卵コブシメの探し方◆
                 
 まず産卵床と予想されるサンゴを見つけたらすぐ近ずかず、身体を濃茶色にして産卵準備中のコブシメがいないか確かめます。いないよ うだったらサ ンゴにすでに卵が産みつけられていないか覗き込みます。卵がすでに産みつけられていれば、その卵が産つけられたばかりのものか時間のたっているものか観察 します。白くて固めが産卵したて、やわらかく半透明でよく見ると卵の中にコブシメの 赤チャンが見えるのは産卵後時を経たもので産卵ウォッチングの確率は低くなります。白くて固めの時はもう一度あたりをじっくり見渡して探しましょう。

◆産卵ウォッチング・スタイル◆

 産卵中、産卵前のコブシメを見つけることができたら、これからがウォッチングプログラムの始まりですので、カメラ持参の方は特 に参考 にし てください。慌てて近ずきすぎてコブシメが逃げてしまい、バディから嫌われるという事だけではないのです。これから述べる産卵ウォッチング・スタイルを守 れば、あなたのシャッターチャンスがタンクの残圧分ひろがるうえに、今まで体験したことのないダイビングの素晴しさに巡り会うかもしれません。

◆産卵準備中のコブシメ◆

 身体を濃茶色にしてジッとたたずむ様子のときは、あなたもジッとして コブシメの変化を待ってください。膝立ち姿勢で片手はサンゴをつかむと砂を巻上げず安定し、コブシメの警戒をおさえます。砂を巻上げたり不用意に近ずかな ければ、ダイバーの排気音など気にしません。それほど産卵は重要な行為なのです。濃茶色のまま足を抱き込むように、顔が丸く見える時は、交接で受け取った 精子で受精しているのではと推測されます。

◆産卵と体色◆

 数分後体色を変えてサンゴの上に移動し、腕を細くのばしてサンゴのすき間に差し入れたときがシャッターチャンスです。卵を一個 ずつそ れも 丁寧に産卵が始まります。するとコブシメの背中が星空のような輝く模様に彩られ、また様々に変化します。この体色の変化が次の観察テーマです。産卵の合間 には色が冷めて白っぽくなり、産卵を始めるとまた輝くのです。イカ、タコ類は体色の変化を情報手段とするといわれています。悲しいかな彼等の情報を受け 取っても理解できるかは疑問です。しかし同じ生物として感じ取ることが、それもダイバーだからこそ、その機会に恵まれていると言えないでしょうか。

◆おまけ◆

 コブシメの産卵は単独が少なく、複数群れることが多いといえます。産卵の観察の合間に周りをじっくり見渡すと、遠くの根の上に たたず む コブシメが見つかるかもしれません。そのコブシメはオスの可能性が高く、もし2匹以上見つけることができたらあなたはとてもラッキーです。産卵するメスを 奪いあうオスの戦いを目のあたりにする可能性があるからです。オス、メスを見分けるのも体色の変化です。戦いの時、体色が白黒の縦縞模様になり、メスの産 卵模様を観察していたあなたにはすぐに識別できます。

そしてもしあなたがオスメスの交接を目にすることができたら、ジンベイザメ遭遇に比較できるそれは貴重な体験なのです。コブシメ の産卵 は数日間に渡って100個以上の卵を産みつけるといわれてい ます。その数日間のあいだに数回の交接があると予想されますが、それはわずか数十秒の出来事なのです。交接の様子、それは秘密です!!!。

◆観察と写真撮影◆

 ダイビングと水中写真撮影は、現在ではとても強い絆で結ばれてると言えます。
撮影するというテーマがよりダイビングを意味ある楽しみとし、生物観察の楽しさも広げました。それだけでなく今では水中生物の新発見はほとんどが ダイバーと言えるほどです。今回のプログラムはその素晴しく楽しい水中写真撮影をよりひろげる為と理解してくれることを望んでいます。撮影という行為に切 り離せないシャッターチャンスという現実のために、ファインダーを覗く事にのみ集中して、生態観察のチャンスを失うのは惜しいのです。また、じっくり生態 観察したおかげで素晴しいシャッターチャンスを手にすることも可能になるのです。

●最後に●

 ダイバーのための“自然をより深く学ぶことは、より楽しくなることだ”プログラムを勝手にスタートします。ダイバーが南の海を 訪れた とき に可能なプログラムとなるだけでなく、みなさんの近くの海でも応用できるよう心がけますので参考にしてください。次回は渚の環境監視者「星砂物語」です。  
 次回は ☆☆☆☆ 渚の環境監視者 星砂物語 ☆☆☆☆ です。あてにしないで待ってて下さい。

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96/03/03
     Monsoon Smog

地元、八重山毎日新聞の1996年3月2日(土)声欄からです。執筆者、石田広海(ひろみ)さんの了解を得て転載します。
 彼の妻への思いやりにも心を打たれるのですが、冬の日本列島を襲う隣国からの公害を、かって公害で世界に名をはせたこの国は、身体への影響で調 査すら始めれないのでしょうか。エイズ問題に揺れる厚生省のお役人さんこれを読んで点数稼ぎになると判断してでもいいですから、調査依頼を全国自治体にパ ソコン通信で素早く伝達して調査し、報告をまとめて記者会見して下さいよ。なんてことはありえないのです。

      【 保健所が雨水を持っていったが・・・  石田 広海 】
 
 朝、いつものようにNHKのおはよう日本を見ながら、朝食を取っていたら、美しい蔵王の樹氷の風景が映し出された。暫し、箸を休めて見ていると内容は、 樹氷の氷がおかしいという内容のことをキャスターが話し始めた。
 ここ数年、氷にこげちゃの色がつくので、地元の樹氷友の会の人達が山形大学理学部の助教授に分析を依頼したところ、通常では考えられないほど酸性度が強 く(PH3,5 )、しかも色の成分は、ろ紙でこして調べたら、車の排気ガスや汚染処理のされていない工場の煤煙の成分を大量に含んでいた。しかもそれらは恐らく、西高東 低の冬型の気圧配置の時に大陸から季節風にのってやってくる、とその助教授は結んでいた。
 
 キャスターの顔に画面が替わり「なお、助教授によると、今のところ直接人体には影響はないということですが、この氷をウイスキーなどにいれて飲むマニヤ がいます。くれぐれも入れ過ぎにはご注意下さい」と結んでいた。
 見終わった私は、この問題はそんなふうに片ずけられることではないと、つぶやいた。
 
 私の妻は八年前の出産以来、喘息になった。それまでは健康を絵にかいたような人だったけれども、医者が言うには出産でホルモンのバランスが崩れ たのだと言う。それはそれとしてなんとか予防はと、喘息に係わる資料を山ほど集めいろいろ試したり、島のオバーなんかに聞いて、良いと言われることは全て やってみたが、いっこうにらちがあかずにいた。
 
 仕事で毎日の気象状況を日記替わりに付け始めて五年、どうも妻の体調と風が関係するのでは、と思い始めて注意するようになると、案の定冬、しか も冬型の気圧配置が強まって北よりの風が強いほど喘息もひどくなってくる。そうして、そんな日は白いものが黒いすすのようなもので薄黒くなり、雨を伴うと 白い車に黒いあまだれの線がつくのを発見した。
 
 これ以上自分ではどうすることもできないので、一年前に知人から那覇の公害研究所に黒い雨、風の正体の分析を依頼したところ、八重山保健所に委託された のか職員の方が二名、二回にわたって私の家の屋根や島内数ヵ所から雨水などを持って帰られた。
 
 あれから一年、何の音沙汰も無しである。群民の健康を考える機関の仕事にしては余りにもいい加減ではないかと、私は言いたいし、今や隣国の公害 が日本にまで押し寄せてきている事実(保健所の報告がないのではっきり事実とは言えないが)を群民の皆さんに知って欲しく、ペンを取った次第です。 最後 に、原因の判らない喘息で困っている方、北風の強い日の外出を避け、外出時にはマスクをすることをお勧めします。
 
           *****以上です*****
 
 沖縄県は6月の環境月間には各地区にて酸性雨調査を行っていますが、気象条件への配慮は勿論なされていません。問題なのは時期と場所の選定で、自然環境 への理解が必要になる事です。

 八重山でも山陰に当たる南に面した石垣市と、彼の住む西表島上原は北に面して、体感する風力も大きく変わります。
 時期を決めて国内一斉に行われる酸性雨調査も、官僚機構の生んだ税金の無駄使いとリップサービスとしか思えません。望むべき調査とは、西高東低 の気圧配置と連動して、それも住宅地だけでなく山間部まで含めて環境全体を対象としなければならず、冬期雨量と風力の強い地域は調査箇所を増やす等の配慮 も必要になります。厚生省だけでなく農水省は農作物における影響を、環境庁は自然環境に、気象台は冬型気圧配置との関係を調査して、と私になんかに言わせ ないでください。

 厚生省HIV問題に象徴される、人命すらも否定する官僚機構の犯罪は、この国の過去に何度も繰り返してきました。戦争から水俣を経て HIVへと連なる事項に潜む、官僚機構が増殖した権限の集中、責任の不在と学習の欠如を、私たちは何も改善出来ていません。そして、世界に比較出来る場所 をもたないこの豊かな日本の自然環境を、葬り去ろうとしているかにみえる公共事業という名の環境破壊もです。

西表島ダイビングスクール プレコ  石田 広海
沖縄県八重山群竹富町上原532-1(西表島)Tel 0980-85-6863

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96/05

Manta Watching Data/Ishigaki Island 1995年/11月作成

マンタ・ウォッチング確率 *ウォッチング数/ダイビング数

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
合計
確率
1990 0/1 0/0 0/3 3/5 1/2 4/5 4/13 4/5 16/16 6/6 2/2 1/3
41/61
67%
1991 1/4 1/1 2/4 6/10 4/9 7/9 2/5 9/10 12/13 7/9 1/4 1/2
53/80
66%
1992 0/0 0/0 0/1 2/2 1/1 1/2 5/9 0/5 7/8 3/3 3/3 1/2
23/36
64%
1993 1/1 0/1 1/1 3/5 1/3 1/3 1/8 6/12 11/11 7/7 3/3 0/1
35/56
63%
1994 1/2 1/2 0/2 1/1 0/0 0/0 2/4 8/8 5/5 7/9 5/5 2/3
32/41
78%
1995 0/0 1/2 2/2 2/2 0/2 0/0 5/6 4/5 5/8 11/11
/0/00
0/0
30/37
81%
月別 3/8 3/6 5/13 17/25 7/17 13/19 19/45 31/45 56/61 41/45 14/17 5/11
214/312
 
確率 38% 50% 38% 68% 41% 68% 42% 69% 92% 91% 82% 45%  
69%

   トータル 214/312 確率 69%
 
ポイント別

1990 石垣島川平石崎
27/36
西表島ヨナラ水 道 9/19 西表島鹿川 1/1 石垣島白保 1/1 西表島タカナ 1/1 西表島カスミ 1/1 カヤマ島 1/1
1991 37/57 12/18 0/1 石垣島白保1/1 小浜島 2/2 黒島 1/1 カヤマ島 1/1
1992 16/26 5/8         西表島タ カナ1/1     
1993 35/50 2/6 1/1 石垣島大崎1/1       
1994 29/38     石垣島御 神崎3/3        
1995 27/35     石垣島大 崎 2/2 西表島タカナ1/1      

<トータル・確率> *ウォッチング数/ダイビング数

  石垣島川平石崎 171/242 71%   西表島ヨナラ 水道  18/35 51%

 *他はマンタの水面遊泳を見つけてスノーケリング・ウォッチング、ヨナラもあり

分析
 6年間のデータでは、9・10月の石垣島川平石崎が確率高い。
92・93年8月は水温が異常に高く(29度)確率低下の原因と思われ92・93年8月を除く『8・9・10月の石垣島川平石崎』が・122/134 『91%』国内No.1のマンタ・ウォッチング・ポイントとなる。
 なお川平石崎は石垣島の北側に面しており、強い北東風(冬の季節風)時は使えなくなる(11月〜2月)。しかし西表島ヨナラ水道と違い 
1、潮流が弱い
2、ポイントが広くダイバーで込み合わない
3、マンタの数が多い
 等のメリットも多い。
案内するサービスの心配事としては、ダイバーが増えすぎて西表島ヨナラ水道がマンタに敬遠され会える回数が減ったように、石垣島川平石崎も成らな いとは言えないこと。マンタに限らず会いたい野生生物には、追いかけるのではなく、こちらに来てくれるのを『待つ・心のゆとり』が必要です。

マンタエコロジー
 これほどダイバーにとってあこがれのスターとなったマンタの生態は、実はさっぱり分かっていない。西表島ヨナラ水道、石垣島川平石 崎といったポイントに 何故マンタは訪れるのか?
 ホーバーリング中のマンタには掃除魚で知られるホンソメワケベラが、何匹もまとわりついて掃除しているのが確認できる。ホンソメワケベラの掃除 のポイントは 10M前後の水深に限られ、広くて深い海のなかでもっともダイバーが遭遇しやすい。その上クリーニング中はホーバーリングするので、より ゆっくり観察できる。これが海外で有名なマンタ・ポイントでは、マングローブやラグーンにつながるチャンネルが多くホーバーリングではなく餌であるプラン クトンの捕食ポイントで、潮流の強いダイバーにとって望ましくないポイントとなる。前述したマンタの群泳は、身体の大きなメスに小さなオスが連なることが 多く、繁殖時期を示す可能性が高い。必ずといってよいほどマンタのお腹についているコバンザメも、よく見ると数センチはなれているのが多い。
 頭ヒレは外側に向いて巻き上がり、クリーニング中は開いて下り、捕食シーンでは開いた大きな口を囲むようになる。目は大きな黒目のみで、サメと同じ瞬膜 があり、目の周りを小さなコバンザメにまとわりつかれた時一瞬、白い瞬膜で黒目が隠れるのが見える。
 個体によっては好奇心が強いのか、ダイバーを見に来る。マンタの視線を受けながら、見られているのはダイバーなのかなと思ってしまう。
マンタウォッチング紙芝居 15 枚組み 
元旦マンタ

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96/06/14

    黒潮物語(1          

 黒潮の歴史が地質学会で研 究対象となり、さまざまな新学説が発表されている。インド洋に流れ込んでた黒潮が、1600万年前ボルネオ島を中心とした地殻変動でせき止められて向きを 変え、東アジア沿いに日本まで流れ込んで来た。このボルネオ島を中心とした古代大陸スンタランドは、現在地球上に生息する遺伝子の大多数が生まれてきたと ころでは?と、生物学会でも注目の場所だ。(遺伝子生物学ともいわれ、一族一種と言われてたイリオモテヤマネコも、スンダランドに起源を持つベンガルヤマ ネコ系との解析が出たばかり)
 海中生物に目を移すと、昔ダイビングの先輩から聞いたことを思い出す。それはサンゴと熱帯魚の起源はインド洋で、そこから太平洋に渡ってき た。その関係で地球上で最も素晴しいダイビングスポットは、そのインド洋と太平洋の間のセレベス海だ、との説だ。サンゴと熱帯魚の起源インド洋説は、ダイ バーの楽園モルジブがあり、まんざら間違いだとは言い切れない。ちょっとまてよ、今ダイバー注目のシパダンがセレベス海に面してる。あのパラオだってセレ ベス海ではないがそんなに離れてない。話を聞いた当時のセレベス海は、共産ゲリラと海賊の横行する未知の海域で、ダイバーの行けるところではなかったし、 セレベス海でダイビングが唯一可能だったのはインドネシア・メナドだけだった。

 インド洋に流れ込んでいた黒潮と、サンゴと熱帯魚の起源インド洋説の符号。古代大陸・陸上遺伝子の宝庫スンダランドの地殻変動以前の 海岸を流れ ていたと推測できる黒潮は、海中での遺伝子宝庫海流と言ってもおかしくない。ビックダイビングスポット・セレベス海説は、地殻変動以前の黒潮遺伝子と地殻 変動以後の黒潮遺伝子を備え持つの意味なのだろうか?

ダイバーが好きなサンゴ礁の海と黒潮は、深い関わりがありそうだ。

 さてその黒潮とは、赤道北を赤道に平行して東から西に流れる北赤道海流を源とする。赤道北側を終年吹きつける北東貿易風と連動し、地 球の 自転から生じる(コリオリの原理)力によって時計回りに曲げられ、フィリッピン、ルソン島東岸につき当って向きを変え北上する。幅100KM以上,速度 1〜5ノット,(時速2〜8km) 水深3000〜4000m(200〜400m説もあり)に達し、流量毎秒約3000万tを超す世界最大の潮流と言われている。北上した黒潮は、三陸沖を東 に太平洋を横断し、アメリカ大陸西海岸を南下して、又北赤道海流に合流する循環流でもある。

 大西洋にも同じ循環流のメキシコ湾流があり、高水温の暖流はいずれも大陸東岸を北上して、陸域は暖流のもたらす水蒸気に恵まれ緑豊か と なっている。北赤道海流と黒潮がどこで区分けされるか、明確な規定が見つからなかったので、北に緩やかに向きを変えるパラオ北辺りを想定してください。な お北赤道海流の一部は今もセレベス海に流れ込んでいる。黒潮は日本海流とも呼ばれ、海外でもkurosioと同一名で呼ばれる。


    黒潮物語(2          

 北上した黒潮は、台湾/与 那国島間の水深800Mの谷を中心に流れ込んでいるのではと言われてるが、正確なところはまだ掴めていないようだ。この海域における海上保安庁水路部の調 査も昨年から始まったばかりだが、最初の報告では非常に複雑な動きのため継続した調査が必要というものだった。

 台湾東の海溝6000Mから与那国島にいたる1000M以下の浅い海底をかけ上がるとき、ジェットポンプのような潮流速度の増加があ るにちがい ない。ハンマーヘッドロックで有名な与那国島西崎の潮流は、強い時ほど北向きで南岸全域に渡って三角波が良く発生する。これは黒潮が水深の浅い海底を乗り 越えて加速され与那国島南岸にぶつかり、西崎ではさらに加速されて北上する強潮流となり、残りは向きを北東に変えられ西表島北に至るのでは?

 昨年夏ある人のクルーザーで与那国島から西表島に向うとき、べたなぎの中に幅100M程の潮流が作る波浪の帯が見えた。20t未満の ク ルーザーは波に翻弄され、波浪の帯を横切って南に向け静かな海面を目指した。その時南下する大型タンカーと行き会わせたが、大型タンカーも明らかに大きく 舵を切って潮流を避けた。西表島北の海底地形は、水深100Mから1000Mにかけた急深地形でほぼ直線状に北東へと連なり、対岸中国大陸棚落ち込みの入 り組んだ地形と対象的でさえある。

 与那国島は国内で最初にそれもまともに、そして強く黒潮に洗われる島だ。その中でも特に強潮流の発生する西崎に、なぜハンマーヘッド シャークが冬から春にかけて群れるのか、瀬戸内海中心に近年さわがれているサメ騒動とあわせて考えても、人間はサメについて何もわかってないことに気ず く。西崎がパラオブルーコーナーのように深海からの湧昇流発生ポイントなら、深海栄養分がもたらすドロップオフ沿いの縦状食物連鎖生態系をあおぎ見るビッ クスポットになるのだが。(パラオブルーコーナーについては、雑誌からの推理のみで一度も行ったことがない。)

 与那国島西崎の潮流に話を戻すと、与那国島北の広大な大陸棚浅海に起る潮の干満影響を受けて潮流の脈動が発生しているようだ。大陸棚 で 起きる引き潮では、与那国島西崎の北上強潮流も影響を受けて北上できず反対にゆるやかに南下するほどに。上げ潮では、西崎潮流も引っぱられるように強く北 上する。与那国島西崎の潮流は干潮前後2時間が潮止りおよび潮がゆるく南下し、満潮時最強の北上潮流パターンが予測できる。


    黒潮物語(3         

 浅い海底を乗り越えて加速さ れた黒潮は、琉球列島沿いと中国大陸棚間に今も海底が裂けてゆくという最大水深2500mの沖縄舟状海盆(沖縄トラフ)になだれこむ。沖縄舟状海盆は、日 本海成立地殻変動解明の例証として調査が継続している。1986’には深海調査船『しんかい2000』によって熱水性鉱床が発見された。地球科学では新し い海洋底拡大説(プレート・テクトニクス説)からの調査で、大洋中央海嶺に確認された熱水性鉱床が(15年程前ガラパゴス沖)、世界で初めて背弧海盆(琉 球弧/中国大陸の意)で確認された。

 黒潮が北上した1600万年前、琉球列島は中国大陸とつながる橋状の陸地だったと言われてる。(現・本州程の面積から橋状の細長い形 まで諸説あり)橋状・琉球弧に塞がれた当時の黒潮は、琉球弧を南岸沿いに北上していた。
 時を経て70万年前、中国大陸棚に接していた琉球列島が、沖縄トラフの広がりで大陸棚を離れついに黒潮が流れ込み、大陸大河川の濁りを食い止め て現世の琉球大サンゴ礁海が誕生した。琉球大サンゴ礁海の規模は、オーストラリア・グレートバリアリーフに至適する程との説がある。この説の源は、琉球弧 の南・西表島から慶良間諸島南西沖50Kmに渡って海底下500mに見られる平坦で石灰岩に覆われた島棚、「南琉球弧500m島棚」から生まれた。

 与那国島南岸にぶつかり向きを北東に変えた黒潮支流は、西表島北西に浮かぶ岩礁、仲御神島を横目にしながら西表島北西岸をかすめるよ う にして、琉球列島の東シナ海側に沿うようにして進む。台湾/与那国島間を乗り越えて沖縄舟状海盆に流れ込む本流は、琉球列島を横切る海底谷にも支流となっ て流れ込むに違いない。多良間島・宮古島間には800mの谷があり、大きく湾曲して流れ込む先に伊良部島・通り池が見える。宮古島北東八重干瀬の先にも 900mの谷がある。

 100km程北進した先に慶良間海裂がみえてきた。ここは琉球列島を横切る最深の海底谷で、水深1500m程もあり幅も広い。慶良間 海 裂の北は久米島で、西は慶良間諸島だ。慶良間海裂は、子育てしながら北上するザトウクジラの休息場所なのだろうか?15万年前から始まった琉球列島最大の 地殻変動、うるま変動で、慶良間諸島から本島南部に至る大きな陸域が海面下に沈み、現在の慶良間諸島は当時の山頂で、その根拠として海面下400m程のと ころに固い石灰岩が確認されている。

*参考 海上保安庁11管区ホームページ先島群 島海底地形図

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