(1991)平成3年5月19日(沖縄タイムス) 漁業
莇 和義=投稿
海や河川の持つ自然の浄化作用の仕組みは、驚くほど合理的かつ効率良く形
成されており、海や河川に生物の死がいや排泄物が混入しても、海岸や(イノー)
礁池の海底砂の中、あるいは川岸や川底砂の中で、流波や干満の潮流、波浪などによって絶え間なく酸素が供給されて、好気性消化細菌と呼ばれる多種に及ぶバ
クテリアが、それぞれの役割分担を持って浄化作用を行っている。その作用とはタンパク質やアミノ酸などの有機物質が海や河川に混入すると、従属栄養細菌が
働いてアンモニアに変化させ、すると亜硝酸化成バクテリアが働き出しアンモニアを亜硝酸塩に分解、次いで硝酸化成バクテリアが亜硝酸塩を硝酸塩に分解、硝
酸塩は光合成細菌によって窒素に分解され、窒素は藻や海藻などが体内に吸収して酸素に換え放出する。この微生物連鎖により水中の生物にとって毒性のあるも
のを随時分解し無毒なものに浄化し、水中生物を保護する役割を持っている。
現在の沖縄は効率補助による開発第一主義によって河川はコンクリート化され、海岸は埋め立てによる護岸コンクリートと礁波ブロックに囲ま
れ、好気性細菌
の生息場所が著しく減少し、自然の浄化作用も低下の一途にある。さらに開発行為と降雨による赤土流入は好気性微生物にとって致命的であり、水底での皮膜力
が高く通気性の少ない赤土が流入すると、好気性消化細菌の生息場所を覆ってしまう。そのため酸欠状態となり好気性消化細菌が死滅減少し、さらに酸欠状態が
続くと嫌気性バクテリアが発生、浄化作用によって分解された硝酸塩などを元の有害物質アンモニアに還元作用で戻してしまう。そして嫌気性バクテリアのもと
では分解出来ない有機物質が蓄積されてくると、窒素やリンが大量発生して富栄養化が進行、植物性プランクトンの大量死亡発生を繰り返したい積ヘドロとなり
水底に蓄積され、サンゴ礁や魚類はもとより水中生物全体の生態系にまで悪影響を及ぼすことになる。
他府県では海水の富栄養化が赤潮現象の要因ともいわれ防
止策を取っているところもあり、淡水ではアオコの大量発生につながり河口敷きではアンモニア臭を放つ。赤土などの直接被害は黙視できるが、間接被害は目に
見えないところで進行し、気ずいたときは手遅れのケースが多い。もちろん赤土だけでなく工場、畜舎排水や有機リン洗剤を含む家庭雑排水も大きな問題であ
る。以前の海や川を取り戻すためには赤土汚染とともに広い範囲で
海や河川を守る認識を県民一人一人が持ち、開発行為においても積極的に自然との調和を図りながら、明確な汚染防止に向けまい進する事が今後はもっとも大切
なことである。その時にこそ赤土(海洋)汚染防止の効果的な改善策が生まれてくるのである。