八重山毎日新聞
1999年 7月22日(木)

赤土対策で意見交換

監視ネットワークと支庁

農家の理解や費用の悩みも

 赤土流出で直接被害を受ける漁業者やダイビング業者らで組織する「赤土監視ネットワーク」と、「石垣島周辺海域環境保全対策協議会(仮称)」の設置を予 定している県八重山支庁との意見交換会が21日夕、同支庁であった。この中で、なぜ農地の赤土流出防止ができないのかとのネットワーク側からの問いに、県 側は「農家の理解を得るのが難しい」としたほか防止策の費用負担の問題を示した。
 意見交換会には県からは山城直吉次長のほか関係する課の担当者が出席。農家、建設業者なども加わった。
 県側の説明によると、さまざまな赤土対策事業を展開しているが、例えば国庫補助事業で行っている水質保全対策事業の執行率は悪い。盛山地区では99年度 から5カ年で3億9100万円をかけて防止策を講じていくことにしているが、対象農家に行った現地説明会には50人余のうちわずか数人しか集まらなかっ た。
 担当課は「農家の理解を得ながら進めていかないといけないが、(土地の縮小で)反対もある」と説明した。
 また、農業改良普及センターは「グリーンベルトを設けると、10%から13%の農地が減る。減る分の所得をどうするか。経営上どうカバーしていくか」と 課題を示した。
 赤土流出が即生活にかかわってくる沿岸漁業を営む仲田森浩さん(漁業)は定置網に付着した赤土を写真で示しながら「大雨が降らなくても赤土は浮遊してい る」と抜本的な対策を求めた。
 ダイビング業者は継続性のある定点観測による被害調査を要望したほか「行政も現状をみてほしい。早めに対策をとらないと八重山のサンゴはなくなる」と訴 えた。
 また、県が赤土防止に関して行う農家に対する説明の仕方について、技術的な用語が多く分かりにくいとした上で「ビジュアル化するなどして、だれがみても 分かるようにしてほしい」と改善を求めた。
 山城次長はこれまでの土地改良について「復帰直後の高率補助で生産の視点が強く、いっきに工事を行った。赤土流出は想定されていなかった」と述べた上で 今後は「みんなでいっしょに(流出防止を)やらないといけない」と話した。

<「加害者は土地改良」と訴え>

21日行われた県と赤土監視ネットワークとの意見交換会は活発だった。 ネットワークのメンバーは漁業者やダイビング業者らで、赤土流出が生活を脅かすものだけに、それも当然。漁業者の1人は、新川川周辺の漁場に設置した定置 網に赤土がどの程度付着するか、写真を使って、そのひどさを訴えた。ほこ先は農家ではなく、土地改良事業。「漁師の中に農家が加害者と思っている人はほと んどいない。農家も土が流れるので被害者だ。農家も土地改良に対して不満があるのではないか」。