八重山毎日新聞
1999年 6月 4日(金)

 赤土監視ネットワークを結成

ダイビング協会や漁協青壮年部ら

流出記録集積し対策

シンポの開催なども提案へ

 八重山漁協青壮年部赤土班(仲田森浩さんら5人)と八重山ダイビング協会(宮里安昌会長、57業者)、赤土流出を考える会(大浜雄二 代表、30人)は3日、赤土監視ネットワークを発足させた。同ネットでは、赤土流出を「農家にとっても大きな損失」と受け止めており、今後、若手農家との 意見交換会や、農業者と連携したシンポジウムの開催などを提案していく。郡内では、県と市が、民間主導型の組織「石垣島周辺海域環境保全対策協議会」の立 ち上げ作業を進めているものの、委員を構成する団体の間で「意欲」に違いがあり、難航している。今回、市民運動としての赤土流出防止活動がさらに拡大して 動き出したことは、同協議会発足の準備作業にインパクトを与えるものとなりそうだ。

 同ネットは「人間活動の影響、公共工事の影響によって影響を受けたさんご礁の海を、以前の海に回復させる義務がある。さんご礁衰退の 原因が明らかならば、市民の手によって取り除く努力を始めるべきだ」として結成。
 赤土流出の現場を発見した会員が、赤土防止条例を担当する八重山保健所生活環境課にすぐに知らせて対応を求めるとともに、流出の日時や場所、発生源など を記録した「データシート」をつくり、赤土流出に関する記録を集積していくことにしている。
 これと並行して、既存の農地からの赤土流出改善策やさんご礁生態系の修復について研究を進め、これらをテーマにした市民による討論会の開催を提案してい く考え。
 また、同ネットは「赤土流出を考える会」を発展解消してつくられた組織という側面も持つ。このため、同会がこれまで追究してきた野底地区での農地造成に 伴う赤土流出問題について、引き続き原因究明や再発防止策の実施、関連企業と八重山漁協との間での汚染防止協定締結といった作業を進めていく。
 同ネットのメンバーは3日午前、石垣市役所記者クラブで記者会見し、仲田さんは「漁民が被害者ではあるが、加害者と被害者という区別を抜きにして、どう 赤土流出を止めるかというのが最近の傾向。赤土流出を社会問題としてとらえ、一般市民と連携していきたい」と、幅広い層の参加を呼びかけた。
 また、「行政機関のなかには、赤土流出に関連する部署がいくつもあって市民には分かりにくい。窓口を一本にして、話し合いができるようにしてほしい」と も述べ、赤土問題について市民の要望を受け付けやすいような行政機構を求めた。
 同ネットの結成について八重山支庁では「赤土流出防止では、民間側の積極的な動きがぜひ必要だと思っていただけに、よい運動だ。同ネットの活動を広げて もらい、石垣島周辺海域環境保全対策協議会とも連携していってほしい」(山城直吉次長)と話している。
 


個人で「赤土防止」実験

農・漁家の比嘉さん父子

農地の一部ブロックで

 八重山漁協青壮年部の前副部長、比嘉幸秀さん(38)が、父親が持つ農地の一部をブロックで囲い、赤土流出をどの程度止めることがで きるか、4年ほど前から実験している。農地からの排水が悪くなるといった問題点もあるが、比嘉さんは「畑から赤土を止めるためにはどうしたらいいのか、ま ずはやってみないことには分からない」と話す。
 比嘉さんの父、幸信さん(61)は漁協の組合員でもあり、農協の組合員でもある。赤土流出問題では、流出させる側と、流出された赤土を受ける側の両方に 立っていることになる。
 ブロックを積んでいる農地は石垣市新川田原地区の宮良川土地改良区内にある約2.5アール。南側と北側に沿って側溝があり、ブロックを設ける前は、大雨 が降ると、赤い水が側溝を伝って畑から流れ出すという。
 ブロックを積む前に、側溝のすぐそばに植えたキビを調べたところ、側溝から離れたところに植えたキビよりも、明らかに生育が悪かったそうで、幸秀さんは 「栄養分を含んだ土が、流されてしまったからではないか」と推測する。
 比嘉さん父子は、この排水が赤土汚染に結びついているのは間違いないとして、ブロックを積み上げることにした。畑の傾斜に合わせて、1段から4段のブ ロックを積み、赤土の流出を防いでいる。
 幸秀さんは「ブロックによって、赤土をどの程度止められるか調べている。赤土流出防止に効果があると言われているオオギバショウの導入も考えてみたい」 と話していた。