復帰後の農業基盤整備事業や大規模な土地開発などが原因で、石垣島などの沿岸部は年々、赤土汚染が深刻化している。とくに観光の名
所として有名な石垣市川平湾内には赤土がたい積し、観光や水産業に重大な影響を及ぼしかねない状況だ。このような事態を踏まえ、昨年から官民一体となった
赤土流出防止対策への機運が高まっている。その1つが月桃やヒマワリなどを圃(ほ)場の周りに植えて、赤土流出を食い止めるグリーンベルト作戦だ。とくに
月桃は、赤土流出防止に大きな効果を挙げていることから、農家への普及・拡大が期待される。
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赤土流出防
止対策に最も効果があるといわれる月桃のグリーンベルト |
2000年から毎年、石垣島全域で赤土汚染の実態調査を行っている石垣島赤土監視ネットワークが昨年11月に発表した調査結果による
と、石垣島の沿岸部の赤土汚染がさらに悪化していることが分かった。
それによると、「立っているだけで足がのめり込む状態」のランク8が前年より3地点増えて8カ所に上った。被害は通路川のほか、轟川、宮良川、新川川、
名蔵川河口に集中しているという。
また「注意してみると底質が分かる」ランク5以上も全体の8割を占め、前年より1地点増え、53地点となり、赤土汚染が島全体に広がっていることが明ら
かになった。
赤土汚染問題は7年前に施行された県の赤土等流出防止条例で、開発工事による流出は改善されつつあるが、農地からの赤土流出は依然として続いているとい
う。
市が01年に市内の農家の半数に当たる684戸を対象に初めて実施した赤土流出防止対策アンケートでは、約6割の農家が「自分の畑から赤土が流出してい
る」と回答。
また「赤土汚染に関心がある」「非常にある」が合わせて91%を占めるなど、農家の半数以上が自分が耕作する畑が赤土流出の主な要因になっているとの認
識を示した。
グリーンベルトや緑肥作物の栽培など流出防止対策については、3割の農家が「支援策があれば実施したい」と答えている。
市ではこれを受け、全庁的な赤土防止対策本部を地域振興室内に設置。国・県に予算の増額などを要請し、昨年から本格的な対策事業に着手した。
行政や民間など38団体で組織する石垣島周辺海域環境保全対策協議会が実施した緑肥作物栽培による裸地解消やグリーンベルト設置などによる圃場からの赤
土流出防止対策もその一環だ。
とくに赤土の大きな発生源となっている圃場では、キビ収穫後から夏植えまでの裸地状態が問題となっていることから、同協議会では昨年3月、農家の協力を
得て、市内11カ所、8.2ヘクタールの緑肥作物普及モデル展示圃(ほ)を設置。キビ収穫後の畑にヒマワリやピジョンピー、黒ゴマの種をまいた。
ピジョンピーやヒマワリは土壌改良効果や緑肥効果が高く、黒ゴマは収穫すればゴマとして換金作物になるとあって、一石二鳥の赤土対策として関係者の期待
も高い。
また、ヒマワリは土壌流出防止だけでなく、満開の時期には見事な景観をつくり出し、人目を楽しませる効果も。
一方、赤土流出防止に最も大きな効果があるとされるのが、月桃を畑の周囲に植えるグリーンベルトだ。月桃は生長するに従い、根を張り、土壌流出に大きな
効果があることはすでに実証済み。
本島の東村や宜野座村、金武町でこの取り組みを視察してきた石垣島周辺海域環境保全対策協議会では昨年6月、事業の一環として市内の小中学校2校に呼び
かけ、学校近くの圃場で月桃を植栽する活動を行った。
これは児童生徒に対する環境教育も兼ねているが、ひいては赤土問題に対する農家の関心を高め、グリーンベルト設置に積極的に取り組もうという機運を高める
ことが狙いだ。
市は今年3月の定例議会に「赤土防止条例」を提案することにしているが、罰則を背景に赤土対策を強化するよりも、農家の協力によって、赤土対策を推進し
たい考えだ。
赤土汚染の被害が最も深刻な石垣市の轟川流域でも、これまでさまざまなモデル事業が県によって展開されてきた。昨年9月には、轟川流域をモデルに効率的
な赤土流出防止対策を推進するための現地検討会(主催・内閣府沖縄総合事務局、県)が初めて開かれ、「モデル事業をいかに農家に浸透させるか」などについ
て意見を交わした。
畑の周囲に月桃を植えたり、休閑期のキビ畑を裸地にしないよう、ヒマワリを植える対策はモデル事業の域を脱し、実践の時期にきている。
ところが、多くの農家からは「グリーンベルトでは収穫面積が減り、メリットがない」と防止策を施す際の補償を求める声がある。
赤土対策に農家みずからの努力も必要だが、農地減少に対する補償制度の早急な確立が求められる。
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大雨のあ
と、農地から流れ出た大量の赤土で真っ赤に染まった崎枝湾内 |
県八重山支
庁がキビ収穫後の裸地状態を解消するため、モデル展示圃に植えたヒマワリ |
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