土曜リポート


ハマサンゴが大量死

白保轟川河口海域

80%以上死滅は26ヘクタールも

動き鈍い行政の“赤土対策”

 白保轟川河口周辺のサンゴが大量に死滅した。付近海域は底質全体に2〜5センチの厚さで赤土がたい積、緊急調査を実施したWWFジャ パンサンゴ礁保護研究センターなど3機関は、原因を「轟川からの流出物の影響である可能性が考えられる」としている。約20ヘクタールもの範囲で比較的汚 濁に強いとされている塊状ハマサンゴなどが全滅するという異常事態だが、八重山支庁などの動きは鈍く、環境保全問題への姿勢が問われそうだ。

(黒島安隆記者)
 サンゴの大量死は白保周辺の漁業者からの情報をもとに先月20、21の2日間、WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター、八重山サ ンゴ礁保全協議会、環境省サンゴ礁研究・モニタリングセンターの緊急合同調査で確認された。
 調査結果によると、轟川河口南にある第3ポール周辺で群体上部に大量のたい積物をかぶった塊状ハマサンゴが大量死。被害範囲はポールを中心に南北約 1.2キロにおよび、中心付近の約20ヘクタールで点在するハマサンゴ群落がほぼ全滅、死亡率80%の海域が約26ヘクタールあった−という。
 被害個所は直径1〜2メートルと直径10〜20センチの塊状ハマサンゴを中心に枝状コモンサンゴ、枝状ミドリイシなどが多種多様に混在、比較的サンゴ類 の多い地域。
 死んだハマサンゴの中には直径1〜2メートルの大型のものが多く、約100年たっていると見られている貴重なサンゴ群集で、比較的強いハマサンゴがこれ ほど大量に死亡したのも珍しいという。
 石垣島地方気象台によると今年の梅雨期間(5月6日〜6月20日)の総雨量は石垣で514ミリを観測、平年値(331ミリ)を53%上回る雨があった。 一方、八重山支庁の調べだと、5月31日から6月1日にかけては139ミリもの豪雨が降っている。
 ただ、1965年には梅雨期間中に948ミリもの総雨量を記録、90年には826ミリの雨が降った。赤土流出、サンゴ生息の条件としては過去にさらに厳 しい時もあったようだ。
 WWFジャパンの小林孝氏によると、轟川河口付近の潮流は北側の盛山グチ方面に流れる場合が多いといい、集中豪雨時に潮の流れが南側に変化し、さらに海 水塩分濃度が低下する干潮時などの悪条件が重なってサンゴにダメージを与えた可能性もあるという。
 今回のサンゴ大量死に関しては環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターがたい積物の分析を含めて原因究明調査を行うことにしているが、問題は轟川 からの赤土流出が影響しているとみられているものの、八重山支庁や石垣市の対応が鈍いことだろう。
 現に八重山支庁には赤土対策を協議する内部組織があり、市には関係機関を網らした石垣島周辺海域環境保全対策協議会を設置している。
 環境保全を全面的に打ち出した組織であり、この問題は6日夜の石垣島周辺海域環境保全対策協議会・ワーキングチーム会議の議題になりそうだが、マスコミ 報道後も表だった動きがなく、今回のサンゴ大量死を単なる天災ととらえるのか、教訓として生かすのかの試金石となりそうだ。
 
赤土がたい積し、死んだサンゴ