八重山毎日新聞
2001年 5月23日(水) 

轟川モデルケースに 赤土防止対策を発表

県八重山支庁

硬軟両面から系統的に

「新沖縄振計」にも提案へ

 八重山支庁は22日、赤土汚染が著しい轟川をモデルケースにした赤土流出防止対策を発表した。河口部に大型沈砂池を設け、赤土で汚れ た川の水が海に流れ込むのを防ぐ提案と、緑肥作物の普及や圃(ほ)場こう配の修正など既存の対策を組み合わせたもので、ソフト面とハード面の対策を「系統 的に実施することによって、赤土流出防止の効果が上がる」(鳩間洋征支庁長)とみている。同支庁では、来年度からの「新たな沖縄振興計画」に同対策を盛り 込めないか県庁内で協議していく。同対策が効果を上げるためには、ハード面の実施に必要な予算や、農家がソフト面の対策に取り組みやすくするための負担軽 減措置を確保することがカギを握りそうだ。

 同支庁は、ソフトとハードの両面に分けて対策を検討した。
 ソフト面では▽春植えや株出しの拡大によって、畑が裸地状態になる期間を短縮する▽緑肥作物の栽培やマルチングの実施▽農家意識の高揚▽グリーンベルト (緑地帯)の設置▽赤土流出状況の監視−の5項目を挙げた。
 ハード面では、短期間で実施する対策と長期的計画によって行う対策に分けた。
 短期対策では▽圃場の保水力や透水性を高めるのに必要な、深耕や堆きゅう肥の使用▽あぜの設置▽被覆植物による裸地面積の縮小▽法面の保護。
 長期対策は▽圃場こう配の修正▽暗きょ排水管の設置▽畑から流れ出る赤土を受ける土砂溜桝(ます)の設置▽排水路の設置▽沈砂池・浸透池の設置▽道路面 と畑面より高くするなどの道路の改修▽施設の維持管理−が必要としている。
 このうち、「沈砂池・浸透池の設置」については「河川河口部には、より貯水量の大きい大型沈砂池を設置し、海域の直前で赤土の流出を最終的に防止する」 と述べ、河口部に大型の貯水池を設けることによって、海域の自然環境を赤土から守ることを提唱している。
 対策の実施に必要な予算は今後、確保に向けて取り組む。同支庁では、石垣島赤土流出防止協議会(会長・山田隆一石垣市商工会長)や3市町とともに、実施 可能な分野から取り組み、赤土対策への関心を高めていきたい考え。
 鳩間支庁長は「これまでは、いくつかの赤土対策を実施しても、それが必ずしも連動していないことがあった。こうした対策を系統的に実施することによっ て、赤土対策の効果が上がると思う。『新たな沖縄振興計画』にこの対策が盛り込まれるように取り組みたい」と話している。



赤土対策に“ヒマワリ”

市内4カ所・計8ヘクタールで植栽

今年7月には壮観な花畑に

地域農業推進会議

 刈り取りの終わったキビ畑にヒマワリなどを植えることによって、赤土の流出を防ぐ試みが4月下旬から市内の4カ所合わせて8ヘクター ルで行われている。7月には黄色い花が畑一面に咲きそろうことになりそうで、新たな農業景観としても期待できそうだ。
 川や海を汚す赤土のほとんどは、畑から流れ出ているとみられ、何も植えていない裸地状態の畑から最も流出しやすい。このため、八重山地域農業推進会議 (会長・喜屋武盛徳八重山支庁農林水産振興課長)がヒマワリと、ピジョンピー(マメ科)を植えて裸地状態の畑を縮めることにしたもの。赤土対策に対する関 心を高めるためにモデル的に実施した。両作物とも、8月には畑にすき込み、緑肥作物として活用する。
 ヒマワリによる赤土対策は前年度も市内の2ヘクタールで行ったが、干ばつのために生育不良になっていた。
 八重山支庁が今年2月、赤土対策に対する意識を轟川流域の農家30戸にアンケート調査したところ、7割の農家が「自分の畑から赤土が流出している」と 思ってはいるが、費用や労力が負担となり、対策の実施に二の足を踏んでいることが分かっている。
 今回のヒマワリとピジョンピーは、2.7ヘクタールに機械で播種(はしゅ)・覆土した場合には約4時間かかった。種子と肥料を購入する費用は約15万 円。
 同会議では今後、労力のかかりにくい効果的な播種方法を確立し、種子と肥料の購入費用で農家に負担がかかりにくいように検討しながら、普及を図る考え。

ヒマワリなどの緑肥作物を植えることによって、赤土の流出を防ぐ試みが行われている畑 (石垣市嵩田地区)