赤土対策に国営事業導入を
流失防止訴え初の市民集会
対策事業所の設置 条例見直しも求める
3項目の大会決議を採択
市民レベルで赤土流出問題を考え、解決に向けた行動の展開を目的とした「石垣島赤土問題を考える市民集会」(石垣島赤土流出防止協議
会主催)が28日夕、市民会館中ホールで行われた。漁業、農業など各界の代表らが切実な声を上げ、「市民一人ひとりの力で解決していこう」と呼びかけた。
国・県など行政機関に対する決議文を採択、▽赤土対策担当事務所の設置▽赤土防止条例の見直し▽国営事業として赤土対策の導入−など早急な抜本的対策を求
めた。決議を受け、協議会では3月中には要請行動を行っていく方針だ。
集会には約250人の市民が集まった。ビデオで河川から流れ出る赤土の実態を改めて確認。あいさつした山田隆一会長は「海を保全、回
復する責務が私たちにある」と訴えた。
意見発表は女性代表・前里和江さん(市商工会女性部長)、児童生徒代表・平良寿満子さん(大浜中1年)、市民グループ代表・佐伯信雄さん(赤土監視ネッ
トワーク幹事)、商工観光代表・宮里安昌さん(八重山ダイビング協会長)、漁業代表・仲田森浩さん(漁協組合員)、農業代表・蔵下芳久さん(農協組合員)
の6人。
漁業者が最も被害を受けていると思われるが、「生活の糧を与えられながら、(海を)守れなかった悔しさも大きく、加害者の1人」と仲田さん。「20年
前、この世界に入ったときには海は赤かったが、次の世代、僕の子どもの世代には赤土を止めてきれいな海で仕事をさせたい」と語った。
前里さんは母親の立場から赤土を羊水に例え、生命の源として海を守る大切さを強調。赤土流出の現状に「私たちに危機意識が欠如しているからではないか」
と指摘した。
「一つの環境が壊れると回りの環境も壊れていくことが赤土問題でわかった」という平良さん。「一人ひとりが自然を、海を、生き物を守っていけたらいいな
と思う」と述べた。
赤土の調査を継続している佐伯さんは「赤土問題の根底にある問題を学ばないと、(大規模な赤土対策事業が行われても)また繰り返される」などとして、市
民運動として継続的にモニタリング調査を行うよう協力を求めた。
ダイビングエリアとして石垣島が日本一になったことに触れた宮里さんは「今は1位だが、赤土流出が続くと八重山の海は死んでいく」と警鐘を鳴らした。
蔵下さんは赤土の流出を「流亡」と表現し、そのメカニズムと対策を示した。ほ場こう配の改善などは「国の責任でやらないといけない」と話した。
集会には大浜長照市長、小底嗣洋議長も参加。あいさつで大浜市長は「本気でやるかどうかにかかっている。今こそ立ち上がって国を動かそう」と、行政も支
援を惜しまないと約束。小底議長も「昔は近くの海で海水浴ができたが、私たちはいつの間にか海を汚染し、赤土で死滅させた」と、議会の全面的なバックアッ
プも明言した。
赤土間題を考える市民集会決議 |
石垣島沿岸の赤土汚染は本土復帰後次々始まった地形の改変を伴う生活基盤の整備事業
や、地域産業振興のため行った農地開発事業、各種大型工事に伴って発生してきた。
沖縄県は赤土防止条例を平成7年に制定し、新規の公共工事や民間工事には排出基準を定めるな
ど、対策に乗り出し、条例施行後6年を経過しているが、本格的な予算を伴わないため実効性が乏しく赤土は台風時や、集中豪雨の際、海域に流出し、真っ赤に
海を汚染している。
さらに条例施行前の開発農地から豊かな表土の流出が続き、対策の効果があがっておらず、自然
環境や近海の漁業者、農家、観光業者への打撃は深刻である。
最近行われた市民グル−プの調査によると、石垣島沿岸の8割が汚染度の高い厳しい環境にあ
り、緊急に抜本的な対策を講じなければ、生産の場であり、人類の財産である石垣島沿岸の豊かで美しい自然環境が危機的状祝にある。
八重山の豊かな自然は島に生きる私たちの生活の礎として大切に保全し、次代に引き継ぐ大きな
責務があります。
国、県、市や関係機関においては、赤土間題の重要性と緊急性を深く認識し、早急に効果のある
抜本的対策を実行して頂きますよう次の通り決議する。
一、国、県、市は赤土対策担当事務所を設置し、現状の把握と実効性のある対策事業を早急に
行ってもらいたい。
二、赤土防止条例を見直し、施行前の事業にも適用し、美しい環境を早急に回復してもらいた
い。
三、赤土対策事業は国営事業として取り組んでもらいたい。
以上のとおり決議する。
平成13年2月28日
宛て先 国、国会議員、県知事、県議会、石垣市長、市議会、関係団体
|
|
約250人の市民が集まり、国営事業として赤土対策の導入などを求める決議をした「石
垣島赤土問題を考える市民集会」(28日夕、市民会館中ホール) |
|