八重山毎日新聞
2001年 2月 6日(火) 

赤土流出防止対策で農地視察

官民組織の保全協議会

農家への補助意見、県の責任追及も

 赤土汚染の防止を目的に幅広く官民で組織する石垣島周辺海域環境保全対策協議会(瀬名波昇会長)は5日、八重山支庁大会議室で「農地 における赤土流出防止対策研修会」を開き、防止対策について報告を受けたあと、実証調査が行われている農地で現地視察を行った。県によると、赤土流出の7 割が農地からと言われており、その発生源対策が大きな課題。県が石垣市新川で行っている防止対策の実証調査で、グリーンベルトによって赤土の流出量が半分 以下に抑えられることが報告された。意見交換で出席者から防止対策に対する農家への補助制度を求める意見のほか、これまで県が行ってきた土地改良事業に対 して責任を追及する声も出た。

 研修会には行政機関、環境保護、建設、土地改良、農漁業の団体の代表や担当者らが出席。瀬名波会長は「赤土流出が大きな社会問題と なっている。このままでは海が枯れてしまう。多くの市民が関心をもって防止に務めていきたい」と述べた。
 研修会では県文化環境部環境保全室が1999年度から2年間、新川で行っている防止対策の実証調査について報告したほか、八重山農業普及センターが具体 的な防止対策を紹介した。
 実証調査はサトウキビ畑を使い、防止対策が施された対策区とそうでない対照区の土砂流出量を測定している。対策区には水の流れる方向に月桃、エン麦など を利用してグリーンベルトを設けた。これまでの調査で対策区の土砂流出量は対照区の半分以下に抑えられることがわかった。
 地主の農家も効果を認めているが、対策費とそれに伴う労力の面で懸念が示されたという。
 意見交換では「農家にとってはグリーンベルトを設けると作付面積が減少するなどのデメリットもある」として農家への補助制度を求める意見や「なぜ農地か ら赤土が流出するのか。県が赤土が流れやすい構造にしたから。そういう事業を県は展開してきた。県は主体的に責任を負うべきだ」として県に主体的な流出防 止対策を迫る意見があった。
 補助制度に関連しては、東村などでは、農家がグリーンベルトに植える月桃を独自で無償配布しているという。
 具体的なグリーンベルト化の具体的な実施を求める声も出たが、県の担当者は「県だけでなく地域といっしょに動きたい」と述べるにとどまり、農家への説明 会など実施に向けては地域の協力を求めた。

赤土流出防止対策の実証調査が行われている農地を視察する石垣島周辺海域環境保全対策 協議会の会員ら(石垣市新川)

<赤土問題に強い関心>
石垣島周辺海域環境保全対策協議会(瀬名波昇会長)が5日、八重山支 庁大会議室で開催した「農地における赤土流出防止対策研修会」には、赤土問題への関心の高まりだろう、会場いっぱいの出席者があった。意見交換も活発で、 これまで県が行ってきた土地改良事業に対する責任を追及する場面も。「まずこれまでの工事がダメだったことを認識してほしい」。