土曜リポート


工事中断した野底浄水場整備事業

軟弱地盤に敢えて建設

ずさんな位置選定の方法

   石垣市水道部が市簡易水道事業で行っている野底浄水場整備事業は地盤が軟弱だったため大雨で地崩れを起こし、工事が中断している。建設地は、軟弱地盤で あるだけでなく、マングローブ林が広がる吹通川の上流に位置し、景観上も問題。今後、本格的な地質調査を経て設計変更を行っていくことになっているが、予 算も完成時期(本年度の予定)も大幅な変更を余儀なくされそうだ。16日、現地調査を行った市議会建設土木委員会の知念辰憲委員長は「水道部だけの問題で はない」として位置選定を含む公共工事のあり方に問題を投げかけた。

(比嘉盛友記者)
 腹が出た擁壁

 野底浄水場の建設地は山の中腹にあり、土砂が崩れたのり面は赤土がえぐり取られたような跡を残している。コンクリートで固めた擁壁の 中央部は地崩れによって腹が出るような形に曲がっていた。
 もともと軟弱地盤であることは分かっていた水道部は9月末、長さ80メートルのコンクリート製擁壁(高さ約6メートル、厚さ1メートル)でのり面を覆 い、さらに擁壁上部ののり面に土留めの抑止杭(直径50センチ、長さ11メートル)を30本打ち込んだ。
 しかし、10月下旬の台風接近で土砂が一部崩壊し、擁壁の3カ所にひびが入った。さらに今月12日の記録的な集中豪雨で動圧によって亀裂が走った。

 位 置 選 定

 市の簡易水道事業では当初、浄水場を吉原地区と伊原間地区に予定していたが、1997年の第1次拡張事業で伊原間から野底に建設地が 変わった。
 翌年、水道部に異動してきた大島部長は、過去の林務経験から野底地区の計画地が軟弱地盤であることを熟知。さらに吹通川の上流に位置するため景観上も問 題として「担当課長に変更できないか話したが、事業決定しているので変更できなかった」という。
 このため、同部長は設計に伴う地質調査を行った上で施工方法や赤土対策に十分配慮するよう指示し、工事を進めてきたが、今回の事態になった。
 大島部長は「30年、60年単位の通常雨量に基づいて設計した。(台風19号と集中豪雨は)予想外の大雨だった」と弁解しつつ、位置選定については「も う少し慎重にすべきだったと思う」と反省する姿勢もみせた。

 「水道部だけの問題ではない」

 16日に現地調査をした建設土木委員会の委員は「軟弱地盤と知りながら、なぜ野底にしたのか。変更できなかったのか」と位置選定に疑 問をぶつけた。また、「地質調査が十分でない」「設計ミス」「位置を変更できないか」との指摘もあり、建設土木委では位置選定の経緯と地質調査の資料を求 め、審査していくことにした。
 知念委員長は「これは水道部だけの問題ではない」と市の公共工事全般について言えることと指摘。位置決定の理由が不透明で、しかも地盤や景観上の問題が あったのに変更できなかったことを疑問視している。
 大島部長も「公共工事の位置選定では各部長で連絡会議をもつなど全庁的に選定するシステムをつくる必要がある」と一部不手際があったことを認めている。
 建設土木委が今回の問題からどんな教訓を導き出すのか注目したい。
 

土砂の一部崩壊で工事が中断している野底浄水場の建設現場