八重山毎日新聞
2000年11月15日(水) 

約8割の地点でランク5の汚染

石垣島・市民赤土調査

監視ネットワークなど3団体

実効性ある対策を要請

大浜市長 強力な運動痛感

石垣島・市民赤土汚染調査(同実行委員会主催)の結果がこのほどまとまり、調査した地点の約8割が「注意して見ると底質の汚れがわかる」のランク5以上の 汚染が確認された。調査に参加した赤土監視ネットワーク(佐伯信雄世話役)、八重山漁協青壮年部(名嘉秀三部長)、八重山ダイビング協会(宮里安昌会長) の3団体はこの結果を踏まえて14日、石垣市に対し県への合同要請などを盛り込んだ「実効性の伴った赤土汚染防止対策」を要請した。大浜長照市長は「市民 全体で考える時期、深刻な訴えを強く表明する必要がある」として大規模な要請行動を行う考えを示した。

 調査は9月24日から10月31日にかけ、67地点から158のサンプル(海底の土)を採取、底質中懸濁物質含量簡易測定法によって 赤土濃度を測定。その結果、採取した158サンプルのうち「微粒子の舞い上がりが確認しにくい」ランク2以下はわずか3、4サンプルしかなく、石垣島周辺 の海が赤土などによって汚れている実態が浮き彫りになった。
 中でも汚染が進んでいないと思われていた平久保半島周辺がランク4以上で占められ、大浜市長も「予想外の結果に驚いている」と認識を改めた。
 ネットワークでは今後市民調査員を増やして年数回の調査を行う予定。時期も赤土が流出しやすい降雨後にすることにしている。
 要請には3団体から十数人が参加し、農地や道路、河川などから赤土が流れない対策を講じるよう強く求めたほか、今後の農地造成の際に赤土流出監視をネッ トワークへ委託することなどを要望。佐伯世話役は、特に既存の土地改良事業地区からの抜本的な流出防止策を求めた。
 大浜市長は必要性は認めたが、「対策は大規模になるので市、県レベルでは対応がむつかしい。機会あるごとに国に訴えているが、さらに強力に運動しなけれ ばいけないと痛感している」と国の事業導入の必要性を強調。その上で、合同で要請活動を展開していくと約束した。

9月24日から10月31日にかけて行った石垣島・市民赤土汚染調査の結果を大浜長照 市長(左端)に報告しながら、効果的な赤土流出対策を求める赤土監視ネットワークの佐伯信雄世話役ら


野底浄水場

軟弱地盤で工事中断

台風、豪雨でのり面など崩壊

赤土対策、設計変更を迫られる

完成は大幅にずれ込む見通し


 石垣市水道部(大島正光部長)が簡易水道事業で行っている野底浄水場整備事業は、10月の台風と今月12日の集中豪雨でのり面の土砂が一部崩壊したほか コンクリートの擁壁にもひび割れが出たため、今月6日から工事が中断している。建設地はもともと地滑りしやすい地盤でしかもヒルギが繁茂する吹通川の上 流、位置選定のあり方が問われそうだ。大島部長は「位置選定の段階で、土壌や景観の問題をもう少し検討すべきだったと反省している」と述べた。

 また、赤土監視ネットワーク(佐伯信雄世話役)は14日、大浜長照市長に行った赤土汚染防止対策の要請の中で、土砂崩壊によって浄水 場への進入路から吹通川に赤土が流出したと指摘、改善を求めた。屋比久清光民生部長は「厳しい現場だった。進入路に沈殿地を造るよう指示した」と説明し た。
 水道部では土砂崩壊部の下方に基礎堀りした大きな穴があったため「そんなに流れてない」と説明。さらにいくつもの沈殿地を設置しており、「できる限りの 赤土対策はやっている」として今後天候が回復次第、沈殿地に貯まった土砂を取り除く作業を行っていくことにしている。
 水道部によると、野底浄水場は昨年12月に工事に着手し、進ちょく率は70−80%。しかし、10月末の台風による大雨によって擁壁上部ののり面が一部 で崩れ、集中豪雨でも地滑りで擁壁に数本のひび割れが入った。
 大島部長は、この地区の地盤が地滑りしやすいほか吹通川の上流に位置するため景観上問題だとして、今後設計や施工方法などを再検討していく考えを示し た。地質調査をはじめ沈殿地や進入道路、擁壁などの設計変更をしなければならないという。屋比久部長によると、近く部長級で建設について再度検討していく ことになっている。
 水道部は本年度で完成を目指す考えだが、設計変更やそれに伴う予算措置などで調整に時間がかかるとみられ、完成時期は大幅にずれ込む見通し。

大雨によって地崩れした野底浄水場の要壁上部


石垣島・市民赤土汚染調査の結果がまとまり、赤土監視ネットワークが 14日、公表した。調査した約8割の地点でランク5以上の汚染が確認された。約10年前に同じ方法で県が調査したときと変わらないという。県の赤土流出防 止条例で公共工事などではある程度効果を挙げているが、10年経っても変わらない現状は既存農地からの対策が十分でない証と言える。