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社  説
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こう配修正とうね構築で赤土防止

−改善には新規事業の創設が不可欠−


高まる不満 
 いっこうに止まない赤土の流出に市民の不満が日増しに高まっている。青い海と青い空は八重山観光のキャッチフレーズであり、それはまた、八重山住民が誇 りとしてきた豊かな自然への思いでもあるからだ。その青い海が赤土流出で汚されているため、次第に怒りが増幅しているのである。
 石垣市の大浜市長は新年(1月10日)の記者懇談会で、赤土流出の抜本的解決を求めるために市民大会を開催すると発表した。国・県に総合的な対策事業を 求める要請を決議し、大規模な要請行動につなげたい考えからだという。
 しかしながらいざ実行という段階で、石垣市も赤土流出防止を積極的に図るべき当事者であり、市みずから大会を主催するのは好ましくないとの指摘を受け、 急きょ民間による実行委員会方式で28日に開催することになったようである。
 大会の主催者を民間主導で行うことに変更したのは当然のことで理にかなっている。赤土の流出個所は、土地改良された畑地が7割方を占めていると指摘され ている現状では、その責任の一端は石垣市にもあり、決して他人ごとではないからだ。 

推進された土地改良 
 本来赤土汚染防止を図るには、直接住民と最もかかわりの深い市町村が率先してその原因を突き止め、解決手法を考案して事業化し、財政上単独事業で無理な ら県や国に対して補助事業として採択してもらうよう首長が先頭に立って要請すべきであろう。
 その要請に対して県や国が採択を拒んだ場合、あるいは採択を促進する必要があるときにはじめて市民や関係団体を網羅した大会を開催し要請に弾みをつける というのが本来順当な手順であろう。
 ただ一方で、同問題は自治体レベルでは解決は困難というのも今までの取り組みからして否定できないのも事実だ。
 現在赤土流出の最も激しい個所は宮良川土地改良事業地域内である。新川川、宮良川、轟川流域が著しい。これら地域の赤土流出に対する具体的な取り組みや 予算の状況を開示し市民の理解を得る必要があろう。
 ところで、宮良川土地改良事業は、復帰の前年(1971年)に発生したみぞうの干ばつで農作物が甚大な被害を被ったため、水が自由に使えるかんがい農業 の促進を図るため国に対して強力な要請を行った結果導入されたものである。
 国営事業で真栄里ダムや底原ダムが建造され、県営や団体営事業でほ場整備がなされるなど石垣市農業の近代化が大きく促進された。そのお陰で機械化が進展 し、草地の拡大で肉用牛を中心とした畜産が振興されるなど事業導入以前には想像だにしえなかったほどの改革がなされた。高齢化が進む中で農業が持続してい るのも農業近代化の恩恵と言っても過言ではなかろう。
 そのようなプラスの側面があるとはいえ、赤土流出は時代の要請で実施した土地改良事業により発生したマイナスの側面であるという現実も直視すべきだ。そ れを踏まえた上でも前向きな議論を望みたい。 

まず原因個所の特定を 
 赤土流出個所が畑地であるならば、その原因を最も詳しく知っているのは他ならず農家自身である。耕作しながら雨水の流れを熟知しているはずであり、栄養 分を多く含んだ大事な表土が雨水で流失していくのを悔やんでいるはずだ。その流失を何とかくい止めたいと願っているにちがいない。
 その農家個別の畑地の状況(こう配の状況)を1筆ごと図面に記載し、流失防止策を検討することからはじめて欲しい。そのためにはアンケートなどで農家の 協力が不可欠だ。ほとんどの畑地が、雨水を排水溝へ導くためにこう配を付けて整備されている。そのこう配の度合いが、耕起のたびにひどくなり流失量が増え る傾向にある。大雨のたびに河川に流入する赤土で海が真っ赤に汚染される状況がそれを物語っている。
 その防止策として八重山農業推進会議がグリーンベルト設置を提言しているが、耕地の減少や作物への影響のため反対農家も少なくない。まず農家の意識啓発 に努め、より有効な対策を考案する必要がある。
 単純なことだが、畑地のこう配を修正して水平にし、先人の知恵に倣(なら)って畦(あぜ)を築き流失を減らす工夫も検討に値しよう。
 県の水質保全対策事業を参考に、より大規模な事業の創設を期待したい。