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社  説
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赤土対策は国営事業で

−行政や関係団体は国に要請行動を−

 市民グループが9月に実施した赤土汚染調査の結果がこのほどまとまり、石垣島全域が赤土に汚染されている実態が改めて浮き彫りになっ た。この調査は石垣島全域を67地点に分け、その中から海底の土を158サンプル採取、底質懸濁物質含量簡易測定法で赤土濃度を測定した。
 その結果、「水辺で砂をかき混ぜても微粒子の舞い上がりが確認しにくい」ランク2以下はわずか3、4サンプルしかなく、調査地点の約8割は「注意してみ ると底質の汚れがわかる」ランク5以上ということがわかった。顕著な汚染は特に新川川、宮良川、轟川などの河口付近に目立ち、さらに汚染はないと見られて いた平久保半島周辺のほか、観光地の川平湾もランク5に汚染が進んでいることがわかった。
 

待ったなしの赤土防止対策
 いうなれば赤土汚染防止対策は待ったなしの状況にあるといえる。この調査結果を踏まえて市民グループの赤土監視ネットワーク、八重山漁協青壮年部、八重 山ダイビング協会の3団体は、石垣市に対し「実効性の伴った赤土汚染防止対策」を要請。これに対し大浜市長も、「あらためて深刻な状況がわかった。この問 題はこれまでもずいぶん指摘されながら有効な手立てが取れずにいるのが実情。既に抜本的な対策が必要な時期にきており、国の事業導入を訴えたい」との考え を示した。
 確かに赤土問題は復帰以降大きく問題視されながら、これまで有効な対策は取れていないのが現状。
 沿岸の赤土汚染は、復帰後次々始まった宮良川、名蔵川国営事業を始めとする大掛かりな農地開発事業に伴って年々深刻化。そのため県でも、工事段階で沈砂 池やろ過池をつくったり、そして95年には赤土汚染防止条例も制定。新規の公共事業には赤土の排出基準を定めるなど、本格的に対策に乗り出したが、十分な 効果はあげられず前述の調査結果となっているのが現状。

県赤土汚染防止条例も効果出ず
 県の赤土汚染防止条例は、赤土の流出を規制するとともに、海と河川の水質汚濁を防止し、生活環境の保全を図るとして制定された。面積が1000平方メー トルを超える土地改良や道路工事などの土地改変工事は、民間の場合は届出、国・県・市町村の場合は通知を義務付けている。
 そして赤土の排出基準と県の調査権を定め、違反者には計画変更や改善命令を出し、民間には工事の中止や50万円以下の罰則規定もあるが、公共工事はな く、さらに条例施行前の事業と米軍基地内の事業は対象外となっている。
 95年10月に施行され、今年で5年を経過したが、条例施行前の農地からの表土の流失などがあり、現実には歯止めがかかっていないのが現状だ。そのため 「県の条例は気休めにすぎない。施行前の事業も対象にすべき」と条例見直しを指摘する一方、「県や市町村レベルでは歯止めは利かない。国の力で解決すべき だ」の声が強まっている。

農地開発の“負の遺産”
 確かに県や県内各市町村は、長年あの手この手で対策を模索し、いろいろな試みを続けてきた。しかし現実は好転していない。ということは県や市町村レベル ではもはや限界ともいえる。そこには財政的な問題もある。
 赤土汚染が復帰後の大掛かりな農地開発とともに深刻化した経過からして、その因果関係は否定できないだろう。言うなれば赤土汚染は農地開発の“負の遺 産”といえる。それなら沖縄の、あるいは八重山の地理的・気象的条件を勘案しないで本土と同様に画一的に事業を進めてきた国にも責任の一端はあろう。そこ で国に求めたいのが宮良川や名蔵川水利事業と同じように、国営事業で赤土防止対策事業を実施してもらいたいということ。
 それは先にも触れたように県や市町村レベルではもはや限界にあるからだ。
 カラ岳陸上に決まった新石垣空港建設も赤土汚染防止が最大の課題だ。隣接する白保海域には世界的な遺産であるアオサンゴ群落がある。そのサンゴをいかに 守るか。まずこれを国のモデル事業として実施し、これを何カ年かの計画で順次実施していけば白保のサンゴを始め沖縄の豊かな海、農地、自然が守れることに なる。
 3市町や経済団体、そして内外の自然保護団体が一体となって訴えれば道は開けるはずだ。早急な国、県への要請行動を望みたい。